「はい、もしもし・・・」 
しかし、受話器から聞こえてくるのは踏切の警告音だけだった。 
それも音がだんだん大きくなっている。

「な・なんだ、イタズラなら切るぞ」 
すると受話器から声が聞こえてきた。 
「俺だよ、俺。オレオレ詐欺じゃないぞ」 
「何だよ、お前か・・・」 
それは昼間踏切の話をした友人だった。 
「で、なんだよ」 
「ああ、明日の宿題なんだが数1のプリントが・・・」 
踏切の音でよく聞こえない。 
「おい、それより踏切から離れろよ。音がうるさくて聞こえにくい」 
すると奴は恐るべき事を言い出した。 
「踏み切りだと?そんなものねーぜ」 
「なっ、ちょ、じゃあ混線か?」 
「しらねーよ、ん・・・なんだ、う・うああああああ」
「おい、どうした?」 
一瞬、電車の汽笛のようなものが聞こえて通話が途切れた。 
かけ直しても繋がらない。 
俺は直感的に女が轢かれた踏切へ向かった。 
踏み切りは警察が野次馬を押しのけたりして封鎖していた。 
鉄道職員が線路をキョロキョロしている。 
俺は半ば覚悟しつつ警官に聞いた。 
「あの、すいません。人身事故ですか?」 
「一般の方には言えません」 
「多分彼の友人です」 
「えっ」 
警官は一瞬言葉に詰まった。どうすればいいのか分からなかったらしい。 
上司らしき人と掛け合って戻ってきた。 
「あの・・・あそこの高校の方で?」 
「はい」 
警官は友人が事故で死んだことを教えてくれた。 
死体の損傷が激しく、バラバラになって全ては拾えないそうだ。
翌日、俺はその踏み切りに差し掛かった。 
否が応にも昨日のことが思い出される。 
その踏切には警察官が数名現場検証のようなことをしていた。 
警官のうち一人は、踏切のほうに目をやってるため、 
踏切が閉まった後踏み切りを横切る人もいつもより少なかった。 
俺は警官がごちゃごちゃ話してるのを歩みを緩めて 
盗み聞きした。「まったく、電車が来ているのに踏切を渡ろうとするからだ」 
「ああ、16歳だってのにな・・・被害者はあそこの高校の学生だろ?」 
どこかで聞いた事のある言葉だ・・・まさかな・・・