230 本当にあった怖い名無し 2006/09/13(水) 05:58:38 ID:GLnNXgVS0
<<メガネ>>

真那子さんは、去年、念願の志望大学へ入学を果たした。

 高校時代は中高一貫の女子高で、校則は厳しく「他校男子学生との
交際は一切禁止」だった。
真那子さんの高校は、小高い丘の急な斜面を登ったところに建っており、
そのふもとには大学があった。廊下の窓から、ちょうど大学生達が優雅に
キャンパスライフを送っている姿が見下ろせる。
立地環境もあり、学生の中には密かに大学生と交際をしていた者もいた。
真那子さんも誰かと付き合いたいと胸を焦がすことはあったが、
そこまでする度胸はなかった。校則を破った学生の大半は、
学校内で隠し切れず、結局は噂が広まるか誰かにチクられるかして
バレてしまう。罰則は大したことないのだが、その後が大変になる。
周りからの妬むような、冷たい視線を浴びながら高校生活を過ごすのだ。
そんな校風なので、女子学生同士の交際が少なからず存在した。。
彼女も、一度告白されたことがあった。


231 本当にあった怖い名無し 2006/09/13(水) 05:59:55 ID:GLnNXgVS0
 彼女は普段は黒ブチのメガネをしているのだが、ある日同じ吹奏楽部の
先輩からこう言われた。
「あなたのめがね、とったほうが綺麗よ。」
 はじめは単なるお世辞だと思っていた。
「でも、コンタクトはめんどうだから・・・」
「ううん。絶対、とったほうがいいわ。」
 その先輩というのは彼女よりニ学年上で、ちょっと眩しいような笑顔が印象的な
ひとだった。特に、その瞳で見つめられると、なぜだか吸い込まれる。
ある日の部活が終わった音楽室で、彼女は告白された。
「・・・ごめんなさい。先輩のことは好きだけれど・・・私・・・」
 長い沈黙のあと、
「・・・そう・・・。あたしも、突然でごめんね。」
 消え入りそうな声で、先輩はつぶやいた。その吸い込まれそうな瞳は真っ直ぐ
こちらを見つめていたが、涙のせいでやけに黒ずんでみえた。
最後に先輩はこう付け加えた。


232 本当にあった怖い名無し 2006/09/13(水) 06:00:21 ID:GLnNXgVS0
「あなたの瞳がね、好きだったの。めがね、とったほうがいいわ。」
先輩は、眩しそうな笑顔をつくって微笑んだ。
その表情が、なんだか、とても胸をドキドキさせた。
 そのまま時は過ぎ、先輩の学年は卒業の年となった。先輩は他県の医療系大学へ
進学していった。夢は看護士だったそうだ。


233 本当にあった怖い名無し 2006/09/13(水) 06:02:46 ID:GLnNXgVS0
  真那子さんもその翌年、都内の志望校へ合格を果たした。
大学に入ると、服装や髪型からの束縛から解放され、見た目もだいぶ変わる。
ご多分にもれず、真那子さんも髪を染め、オシャレをして、いわゆる大学デビューを果たした。
しかし、メガネの色は変えても、メガネを外すことはなかった。「コンタクトがめんどくさいから」
が理由というのもあるけれど、なんだか視界の四隅に縁取りがないと落ち着かない。
もともと人付き合いが上手いほうではなかったので、
メガネをかけることでなんとなく人前でも安心できた。外界と瞳との間に一枚のガラスレンズを
隔てることで、安心するのかもしれない。
 そんな真那子さんにも、今年に入って彼氏ができた。



234 本当にあった怖い名無し 2006/09/13(水) 06:04:48 ID:GLnNXgVS0
彼氏は短大に通う大学生で、細身の体系で、顔立ちは整っていて両性的な雰囲気がある。
とても優しいし、何より彼の笑顔と、吸い込まれるような瞳が好きだった。
中学、高校と女子だけの生活で、もちろん生まれてはじめての彼氏だった。
はじめは緊張してぎこちなかったが、彼がリードしてくれたし、デートも毎回楽しく過ごせた。
彼は酒好きで、毎回デートの帰りには二人で居酒屋へ寄る。
今回のデートも帰りがけに居酒屋へ寄り、楽しく談笑しながら二人ともほろ酔い気分になった。
 そのとき、彼が切り出した。
「めがね、とったほうが綺麗だよ。」
「えー、そんなことないよ。私はメガネしてるほうが好きなの。」
「なんだよー、そのほうが絶対いいのに。」
「前にもそんなこと言われたけどね、私はメガネでいーの。」
「ちぇー」
 そんな他愛も無い話をしていると、突然


235 本当にあった怖い名無し 2006/09/13(水) 06:05:27 ID:GLnNXgVS0
「今日さ、ホテル泊まろうか?」
 彼からその言葉を聞いたとき、内心少し嬉しかった。この人となら・・・
「え、・・・うん」
 ホテルへ行くということは・・・想像して胸がドキドキした。それをごまかすように、
私にもついにこの日が来たのだ。そう思うと、いつにも増して飲んでしまい、酔いつぶれてしまった。
 気が付くとホテルの小部屋にいた。
「気が付いた?」
「・・・?う~~~~ん・・・?」
 まだ酔いが覚めてなくて、頭がくらくらする。天井と床がぐるぐる回ってるようだ。
彼は裸だった。
「気が、付いた?」
 彼女はそれを見て何か妙な気分がした。しかし、すぐに睡魔が襲ってきて眠りに落ちてしまった。



236 本当にあった怖い名無し 2006/09/13(水) 06:08:22 ID:GLnNXgVS0
「真那子さん」
「う・・・ん?」
「真那子さん、聞こえますか?起きてください。」
 彼女は呼ばれる声で目を覚ました。
「う~ん?・・・ここは?」
「病院ですよ」
 まだ頭がくらくらする。あたりは暗い。
「いま・・・何時ですか?」
「2時です。」
「あぁ・・・夜中の。」
「いいえ、昼の2時ですよ。」
 彼女は、不思議に思った。
「なんでこんなに暗いんですか?この病室」
「それは・・・その・・・」
 困惑する女性の声が聞こえる。しばらくして、申し訳なさそうな声が返ってきた。
「あなたの眼は、見えないんですよ。」
「え・・・失明・・・ですか?」

「はい・・・詳しく言うと、眼が・・・無いんです」


237 本当にあった怖い名無し 2006/09/13(水) 06:10:35 ID:GLnNXgVS0
あるホテルの一室で、女子大生が両目をくり貫かれて倒れているところを発見された。
目からは血が噴出し、見るも無残な姿だったが、病院にかつぎこまれて奇跡的に一命はとりとめた。
犯人の姿はなかった。彼女の体を調べると、犯人は彼女に麻酔を打って、意識を失っているうちに
眼球をくり貫いたらしい。犯人は裸で犯行を行い、血をシャワーで流し、そのまま服を着て逃走したと思われる。
遺留品は見つからなかった。
「よく覚えてないんです。」
 彼女は消え入りそうな声で言った。
「・・・でしょうね。でもね、彼、偽名だったんですよ。」
「え?」
 警察の声に彼女は驚いた。
「住所も戸籍も全部ニセモノ。まぁ、犯人はその、あなたの彼氏だとは思うんですがね。」
「そんな・・・じゃぁ・・・」
「何か彼についておかしなところは無かったですか?特徴とか・・・」
 彼女は少し考えてこう言った。
「あ、そういえば・・・」


238 本当にあった怖い名無し 2006/09/13(水) 06:11:36 ID:GLnNXgVS0
彼には、男にあるはずのもの・・・男性器がなかった。つまり、変装した女性だったのだ。
「その人物に覚えはありませんか?」
 彼女には思い当たる節があった。
「先輩・・・?」
 高校時代の、彼女に告白した先輩は、卒業後に医療系大学へ行った。麻酔の知識もあるだろう。
でもまさか、あの先輩が変装し、自分の彼氏になっていただなんて・・・
「信じられない・・・でもなぜ?」
 警察は彼女に、犯人はすぐ見つかるから、と挨拶をして病室を出て行った。
光を奪われた彼女は、途方にくれた。これから、どうやって生きていけばいいんだろう?


239 gogot 2006/09/13(水) 06:15:33 ID:GLnNXgVS0
 高校では、授業の一環として障害者体験をしたことがある。アイマスクをして、ペアの学生に
付き添われながら5、60Mを歩くのだ。途中に段差があり、彼女はつまづいて転びそうになり、
ペアの学生でなく、近くにいた別の学生にしがみついてしまったことがある。
いまの状態で、大学へ再び通えるのだろうか?いや、のちのち就職するとして、
自分のような人間を雇ってくれる場所はあるのだろうか?目が見えない職種といったら・・・
彼女は、そんな考え事をしているうちに尿意をもよおした。
「どうしよう・・・」
 やはり、一人では行けるわけが無い。簡易用トイレ、または紙オムツを使うかと看護士に聞かれたが、
さすがに恥ずかしくて断った。
「やだな・・・断んなきゃよかった。」

240 gogot 2006/09/13(水) 06:16:22 ID:GLnNXgVS0
 仕方が無いので、彼女はナースコールを押す。
カツカツと廊下に足音が響き、病室に看護士が入ってきた。
「真那子さん、呼びましたか?」
 女性の声だ。
「はい、トイレに行きたくて・・・」
「じゃぁ、途中まで送りますねー。車椅子使いますか?」
「いえ・・・大丈夫です。歩けるし。」
 彼女がそろそろとベッドから降りようとした時、少しよろめいてしまった。
「あ」
 とっさに看護士にしがみつく。
「す、すいません。」


241 gogot 2006/09/13(水) 06:17:25 ID:GLnNXgVS0
「いいえ、こちらこそ」
 にこやかな笑顔が見えてきそうな、そんな声だった。
「こちらこそ、ごめんなさい。」
「え・・・?何がですか?」
突然、看護士の息が耳元にかかる。
「でも良かった・・・とったほうが綺麗だった。」
「な、何がですか」
 彼女は周りの様子がわからない。看護士がどこにいるかも。おおよそ違う方向へ、その声に返答した。


242 gogot 2006/09/13(水) 06:20:06 ID:GLnNXgVS0
「何がですか?!」
「だから・・・あなたのめがね、とったほうが綺麗。」
「・・・」
耳元からささやかれた甘い声が、頭のなかをぐるぐると行ったり来たりする。
「あなたのめがね、とったほうが」
「あなたのめがね、とったほうが」

「あなたの眼がね、採ったほうが」

「!!!」

243 gogot 2006/09/13(水) 06:25:40 ID:GLnNXgVS0
「あなたの眼がね、好きだったの。いまでも綺麗に飾ってあるのよ?」
 おもむろに、彼女と看護士は歩きつづける。
「昔は看護婦って呼ばれてたけど、看護士って職業名に変わったの。なぜだかわかる?」
 言葉が出ない。
「ちかごろ男性も多いのよ。」
 ただ導かれるままに、廊下の外へでた。
「なぜダメだったか、あれからよーく考えたの。でね、あたしが女だったからなんだね。そうだよね?真那子ちゃん
あたし、もっと頑張って、身も心も男になるから。」


245 gogot 2006/09/13(水) 06:26:42 ID:GLnNXgVS0
 ちょうど二人三脚のように、ふたりはトイレへ続く廊下を歩いていった。

「これからは一緒だよ。あたしが、あなたの光になるから」

真那子さんには、光が無い。


   長文&連続登校失礼しましたー。では。