591 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/09/05(火) 17:10:46 ID:zLiGUTOQ0
私は彼氏とハイキングに行った。
お金も無く、とても暑い時期だったので涼しい山でも行こうか、と。
山登りで多少体温が上昇すると思っていましたが、山は意外に涼しく快適温度。
傾斜もゆるかったので楽しく話をしながら山頂を目指した。


「やっと山頂に着いたね~」
「傾斜がゆるかった割には妙に疲れたなぁ」
「もぅ、運動不足なんじゃない?」
そんな会話を交わしていました。



592 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/09/05(火) 17:11:27 ID:zLiGUTOQ0
「すいません、写真を撮ってもらえますかぁ」
前髪を横分けにした綺麗な茶色がかった黒髪でロングヘアの女の人が声をかけてきました。綺麗な人だなぁ。
女性は1人でした。
「はぁい。いいですよぉ~」
私は女性が1人だということに注目している事がばれないように陽気な声で話した。

カシャ

フラッシュとともに女性は笑いました。
「撮ってもらうだけでは悪いので・・私もお撮りしましょうか?」
「それじゃあ、お願いしようかな?」彼氏が私の方を見ながら言った。私も頷いた。



593 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/09/05(火) 17:12:07 ID:zLiGUTOQ0
何故か私はその女性とカメラを撮るだけの縁なのはなんだか勿体無いような気がして、持ち前の好奇心で話しかけた。
彼女は後ろの景色を見ていました。
「ここにはよく来られるんですか?ん~!!綺麗な景色ですね~」伸びをしながら言うと
「そうですね~。久しぶりに来ましたけど涼しくて快適です。」
「天気も良くて・・ん??なんか曇ってきたなぁ??」

「お~い。なんか曇ってきたから降りようぜー」
その辺でカマキリと戯れていた彼氏が言った。

案の定10分後には雨が!

私たちとその女性は結構きつい雨の中一心不乱にふもとを目指した。
「びしょぬれになりましたね~」長い髪をかきわけて女性は言う。
さらに「あの、ふもとまで何で来られたんですか?」
「バスです」彼氏が先に言った。
「よろしければ送りましょうか?どうせ今日はもう少し山に登ろうと思っていたんですもの、時間が余ってしまいましたのでどこへでも送りますよ。」
彼氏と私は顔を見合わせて笑った。
「遠慮なさらずに・・」
「そ、それじゃあ頼みます。。すいませんねぇ・・・本当に」私は本当に申し訳なかった、が彼氏は露骨に嬉しそうな顔をしている。


車の中でいろいろな話をした。
親切な、女性の名前は川橋夕美さんというらしい。
夕美さんは私たちの最寄の駅と二つ違いの駅前に住んでいる。
意外に近いんだな、と。


599 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/09/05(火) 17:26:43 ID:zLiGUTOQ0
うえから593と594の間
数日後、私は電車で二つ目の駅に行った。
夕美さんにあの時のお礼をするためだ。
駅前と言っていたからすぐに見つかるだろう。
駅から5分程の所に川橋、と書いた表札があった。
「こんなに早く見つかっていいのだろうか・・」
思わず独り言をもらした。

ピンポーン

「はーい」ドア越しに夕美さんの声が聞こえる。良かった。この家だ。
「あ、この間の・・・。」
「お邪魔だと思ったんですけど・・お世話になったので・・これ・・」
「わざわざありがとうございます。狭い所ですけど、お上がりください」

・・・・・・・・・
「あ、これ、この間の写真ですか?」
「はい。そうですね、1人で寂しいですけど。あは」
「そんなこと無いですよお。一人でも十分絵になりますよ?」
「・・・・・本当は彼氏と行きたかったんですけどね。事故であっけなく死んでしまって。」
「え・・・、そうだったんですか・・・」夕美さんが本当に悲しそうに言うので私の目にも涙がたまってきてしまった。
「あは、すいません。こんな話してしまって。」
「いえ、私でよければいつでも聞きますよ!」
「ありがとうございます」


600 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/09/05(火) 17:28:58 ID:zLiGUTOQ0
この後いろいろな話をした。
会って二回目とは思えないほど私と夕美さんは馬が合うというか、気が通じた。
考え方が相似していた。
それは夕美さんも感じているようだった。








それからも私は度々夕美さんの元を訪れた。
夕美さんから誘ってくれたり、私から言い出したり。
私の家にも何度か来た。
私と私の彼氏と夕美さんの3人でしゃぶしゃぶパーティをしたりもした。
時には軽い喧嘩もあったけど、数分後には仲直りしているという仲良しっぷり。

もちろん会話も沢山交わした。
夕美さんの亡くなった彼氏はとても背が高かった事、私の彼氏の間抜けな話、水族館で食べたい魚、などくだらない話もどんな話もとにかく沢山した。

594 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/09/05(火) 17:13:09 ID:zLiGUTOQ0
ある日夕美さんの家に居るとき夕美さんが少しコンビニに言って来るね、と言った。
夕美さんが居ない時私は半年前のあの夕美さんが1人で写っている写真を発見した。



597 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/09/05(火) 17:22:06 ID:zLiGUTOQ0
594と595の間



その写真を見て私は固まってしまった。


肌色のぼんやりした人型の影が夕美さんの肩を抱いている。


私は夕美さんの彼氏の霊が、写真に出てきてしまったのだと考えた。なぜなら、その影はとても背が高かったからだ。





数週間後
夕美さんの家に行き、また私一人が家に残る場面があって、もう一度あの写真を見た。


肌色の影が濃くなっている。



598 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/09/05(火) 17:25:33 ID:zLiGUTOQ0

結局夕美さんに私たちの最寄の駅まで送ってもらってしまった。



その夜
「夕美さんって親切だったね~。すごく美人だった。」
「そうだな~~はは」
「何鼻の下伸ばしてんのよ!!」
「イヤ、お前の方が可愛いよぉ」
そういって彼は私にキスした。

595 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/09/05(火) 17:16:41 ID:zLiGUTOQ0
その次の日
夕美さんはあの山に行こうと言った。
私は嫌だった。
でも夕美さんの彼氏の霊が彷徨っているから、なんて言えなかったので渋々ついていくことにした。



山頂に着いた





「私の死んだ彼氏はね、とても背が高かったの。」

・・・前にも聞いたよ?

「それで髪が茶色かったの」

「それでとても明るかったの」

「それでとても、間の抜けた性格だったの」



夕美さんは私の背中をそっと崖の方に押した。


「それであんたに邪魔されたの」