558 本当にあった怖い名無し 2005/11/24(木) 04:16:26 ID:K+YjaO9Y0
唐突ですが。

95年頃、Tさんは念願のマイホームと言うやつを手に入れました。
私は生活には疎いので、一軒家と言うのがどれ程の値段で売買されているか知らないのですが、
それでも30そこそこで手に入れたという話を聞くと流石に感心します。
Tさんの家へは私も時々尋ねたのですが、中々立派で両隣りと向いはいずれも人の良さそうな老夫婦が住んでいる如何にも閑静な住宅街に建っていました。
勿論、Tさんが満足しないわけは無いのですが、ここ最近、と言っても1年と数十カ月程前になりますがある種の悪戯を継続的に受けていた時期がありました。

頃は元日、もとより朝寝が出来ないタイプのTさんは元日も五時半か六時頃に起きて朝の清廉な空気に触れようとドアを開くと冷たい風が頬を纏って流れていきます。
煙草を(余談ですが彼は中南海という変な煙草を愛好しています)くわえて、ぶらぶらと玄関の前まで行くとゴミが玄関の脇にある事を発見しました。
元日に怪しからんなぁ、と思い彼はそれをつまむとゴミ捨て場まで直行しました。
コンビニのビニール袋に入ったそれは赤黒くて、何か液体が大量に入っている物体……例えば、死体のような……
というよりTさんにはそれが死体であるのではないかということが暗々裏にわかっていたのです。
およそ誰が見てもわかるでしょう。とはいえ、特に腐臭や生臭さは強烈に感じなかったそうですが。

Tさんはそれをゴミ置場に放るとさっさと帰って、元日の安穏な気分を取り戻そうと煙草をもう一本くわえたのですが、どうしたものかライターが全然着かない。
すると前から向いの家の老人がニコニコと歩いて来てライターを貸して言うには
「やぁ、元日にしても朝が早いですね。ゴミ捨てですか?元日は回収しませんよ」
「いや……早起きは性分でして……」
と、他愛も無い会話をしてからひょいと老人がゴミ捨て場を覗くとあっと叫んだ。
「アレは……」
Tさんも振り向くと、ビニール袋からは赤黒いどろっとした血がはみ出して垂れ流れているのです。
プルプルしたゼリー状の血液が赤黒い汁にまみれながらビニールの切れ目から溢れ、零れています。
Tさんはその場で何がしかの言い訳めいた事を言ってそそくさと自宅へ引き上げたそうです。勿論のこと、その日は浮かれた気持ちにはなれませんでした。

559 本当にあった怖い名無し 2005/11/24(木) 04:17:59 ID:K+YjaO9Y0
翌日はこともなく過ぎたのですが、七日にはまた同じ所にビニール袋がおいてある。
翌日にもあり、11日にもそれはある、と言った具合で、周期的ではないのですが、
しばしばそういう悪戯にあっていたようです。
Tさんは元来神経が太いので憤慨こそすれ気落ちなぞしない方なのですが、これには流石に参ったとみえ、夏には私に相談に来ました。
「ふぅん、もう二月程になりますねぇ」
「うん。実際ね、これ、堪えらんないよ。なぁ、どうにか手を貸してくんないか?」
といっても私は探偵の心得もありませんし、警察でも無いのです。
「警察へは言ったんですか?」
彼は渋い顔をして手を振りました。彼のお上嫌いは有名でしたが、まさか警察までも頼みにしないとは思いもよらなかったので私は当惑して、
返答を渋りましたが、彼があまりにも熱心に訴えるのでつい
「まぁ、どうにかして……」
などと言ってしまいました。

さて、どうにかもこうにかも、手の下しようがないのですが私はとりあえず死体入りのビニール袋が置かれている日をチェックしていきました。
「あ……」と、思わず声が出ました。関連性、ある類の必然性が浮かび上がって来たのです。
「ねぇ、Tさん。これって祝祭日とかが多いよねぇ……元日にあって七日、それに11日。11日って鏡開きじゃない?2月は、ほら、節分とか立春とか……」
Tさんは慌ててカレンダーを引っぱり出すと赤ペンで印を付けながら数えていく……
「いや、お前……これ、祝祭日だけじゃ無いよ……ほら……」
と、Tさんがカレンダーをかかげるとその印が着いた所には尽く「大安」と書いてありました。
私は何か、嫌なものを感じながら次の祝日か大安を見ると14日、すなわち、明日なのです。
彼は雲霞の立ち篭める庭を横切って、日没から夜もすがら庭で待機して見張る事になりました。
とはいえ、寒いの眠いので彼は日が開ける前、四時頃にコンビニに行きおでんを買いにいきました。

人心地がついた彼が、うちへ帰ると
「あ……」
ビニール。
血が垂れている。犬のクビが覗いている。
彼は急いで私に電話をかけて来ましたが、そんな時分に起きているはずもありません。
彼は、仕方なくタップンと血が揺れるビニールをゴミ捨て場に持っていったそうです。

560 本当にあった怖い名無し 2005/11/24(木) 04:19:06 ID:K+YjaO9Y0
そして、その日。私は彼に呼ばれてその話を聞かされました。
「怨恨だとしても手が込んでいるというか……」
「儀式的ですよねぇ、大安とか祝日を狙うっているのは」
「うーん。なんかそういう呪みたいなのがあるのかなぁ……」
「僕は聞いた事が無いんですが……でも、なんか邪悪ですよね……」
「うん……それでね、聞いてほしいんだけど……」
「なんですか?」
「そろそろ危ないと思う……」
彼の言う所によると、最初はあまり生物的な感じがしないものだったという。
「肉片がさ、例えば市販の豚肉みたいな感じだったし、何か血も絵具っぽかったのよ。で、俺は悪戯だと思ってたんだけど。
次は、本物の血肉で、でも市販の感じだったな。
精肉の前の段階をなんて言うのかしら無いけどああいう感じだったんだよ。血もなんか水増ししたみたいな感じだったし。
しばらくはそんな感じだったんだけど、今回は……犬だろ?
犬って生きたまま殺さなきゃ、なんないじゃん」
つまり、次は犬より上の何か……猿とか人とかと言いたいのだろうと言う事はすぐにわかりました。
「いや、それは無いですよ。ありえないですよ」
「そうかなぁ」
私は、すぐにその場を辞して帰宅しました。あんまり気持ちの良い話では無いしあながち信じられる話でも無いし。

それから、一週間。私は、再び彼に呼ばれて家を訪れました。
私に見張りをやれと言う事らしい。勿論、無下に断るわけにも行かないし、なによりも私自身が見てみたい気持ちもありました。
コートを重ねて庭でテトリスをやりながら時間を潰していると、大体四時か四時半位になった頃……なにやら話声みたいなものがする。
何を言っているのか判然としないのですが、相談をしているらしい。
私はそっと覗くと人影が四、五人見えました。

561 本当にあった怖い名無し 2005/11/24(木) 04:19:33 ID:K+YjaO9Y0
何だ?と思う間にそれが老人、近所の老人である事が知れました。
一人の老人が布をぐるぐるっと丸めると傍らの老女の口に突っ込みくわえさせます。
老女は否やも無くすんなりくわえると、両手を後ろで縛ってもらい胴も腕の上から布で縛ると、すっかり身動きがとれなくなってしまいました。
老人達は何か談笑しながら包丁とノコギリとクサビ(?)と金槌を出して用意を整えています。
私は大凡、事の次第を把握して飛び出そうとしましたが、どうも体がギクシャクして動きません。

心臓も脈打ってこめかみやのど仏がヒクヒク動くのが感じられます。
そうこうしているうちに、一人の老人が老女の口に詰まっている布をぐいぐいと押し込めて喉の奥に突っ込んでいく様が見えたので、
あっと叫んだ勢いで飛び出してしまいました。
老人達はぎょっとした顔をしたものの、私が狼狽して制止しようとするのを強いて抵抗しようともせずすんなりと受け入れ、
すっかり老女の縛を解き、刃物を取り上げる事ができました。
「何をしていたんです……いや、なんなので」と、言う間に
「いや、それは」
「言ってはならんのですけど」
「悪い事はしとらんでしょ」と、言う。
「何を言っているんです。今、この人を殺そうとしていたじゃないですか。
あなた達は、他にもこの家の玄関に死体の入ったビニールを置いたりしたでしょう?違いますか?」
「そりゃ、別に」
「別に?別にって何です?」
「……。」
「弁解はないんですか?じゃあ、警察にいきましょうか」
「あ、いや、それは」
「なんですか?自分達のした事を良くわかっていないようですね?犯罪ですよ」
「うん、でも、なぁ?」
と、老人達はお互いうなずきあい、仕方なさそうな顔をしています。
「まぁ、風水が……」
「え?」
「風水的に……」
「フうすい?いや、何を言っているんですか、そんなのないでしょ」
「いやぁ、無い事はないでしょうが……」
もう後はその問答の繰り返し、良くわからない会話がループしてとても堪えられませんでした。
結局、無理矢理警察に連れていったものの証拠も無いし、知らぬ存ぜぬを通されたらそれっきり。警察はやんわりと双方を説得して終りでした。
結局、それからは彼の家に死体が置かれる事はなかったそうです。


562 本当にあった怖い名無し 2005/11/24(木) 04:21:12 ID:K+YjaO9Y0
が、
「いや、その時は迷惑だった爺さん婆さんだったんだけどさぁ。一応両隣りとかお向かいさんとかだし、付き合いをしないわけにはいかないのよ。
で、なんだかんだあったけど、いつもニコニコしているし、何にも気にしていません知りませんっていう風だから
俺もつい平気でその爺さん達の家に菓子折りみたいなのを持って出掛けていったのよ。
五時過ぎの夕方だったのに普通に出迎えてくれて、家の中案内されたんだけど、壁が……
南向きの壁(つまり彼の家のある側)が妙にぼこぼこしてんのよ……日が暮れて電気がついてなかったから薄暗くて良くわかんなかったんだけど、
気味が悪いから早々に辞したんだけどね。
で、次の人の家にいったらどうも爺さんが病気で寝込んでいるらしいの。
だから雨戸とか閉めっぱなしで真っ暗なんだけど、婆さんが出て来て迎えてくれたから、一応あがって爺さんの所へ菓子折り置いて出ていこうとすると
『おう、おう、誰が来たんだぁ?』とか言うわけ。
『俺です。お見舞いにきたんですけど』とか適当な事言うと、『電気を着けてくれ』って言う。
俺はわかんないから婆さんに聞いたら、オール電化っつーの今のスイッチで家中のライトをコントロールできるやつだったの。
んで、婆さんが一気に家中の電気を着けたら、やっぱり壁が……変だった。
北向きの所はべったりと真っ黒で、南側が小さいなんかよくわからないぼこぼこが浮き出た赤。壁一面赤黒かった。
うわっ、て思ってさっさと席をたつと家中南側の壁はぼこぼこの赤色。
手を触れそうになったけど気持ち悪いから止めたよ」
以来、Tさんは老人等と付き合いを経っているらしいが、最近、より迷信深くなって服装も家の外観も極彩色になって来ているらしい。
私は、Tさんの家には、近付いていません。