706 名前:あらき 投稿日:2001/01/11(木) 12:24
 冬。

夜遅く帰ると
「あれ 今帰ってきたの?」
と 母が言った。

そうだと答えると
「ふうん。」
と 首をひねってから私に背を向けた。
何か合点がいかないようだった。

多少気になったものの飯を食べ終わる頃には、
そんな事 忘れてしまった。

何日か後。
夜遅く帰ると
「あれ 今帰ってきたの?」
と 母が言った。

そうだと答えると
「ふうん。」
と 首をひねってから私に背を向けた。
何か合点がいかないようだった。

そしてある秋。
夜 居間でくつろいでいた私は 頭上から聞こえる微かな音に気付き
天井に目を向けた。
台所に居た母が炊事の手を止めた。

「音と気配」が二階の部屋を ややゆっくりと歩き回っていた。
きちんと 人間の体重が乗った音。

「・・・これかい?」
と 私は尋ね
「・・・そう これ。」
と 母は答えた。