183 名前:183 投稿日:02/08/20 13:24
友人の体験談

彼は、近所のビジネスホテルで夜勤のアルバイトをしていた。
アルバイトは同じサークルの先輩の紹介だった。私の先輩でもある。
そのビジネスホテルは、どこにでもあるような、一晩5000円ほどで
宿泊できそうな5,6階建ての小さなホテルで、2階がフロントになっている。
夜は、バイトの人が一人で対応している。何か有れば責任者に直ぐに
連絡を取るような仕組みになっているそうだ。アルバイト一人に
任せるようなホテルだから、ある程度想像は付くだろう。
実はそのホテルは、彼がバイトを始める少し前に飛び降り自殺があった。
彼がバイトを始めてから、紹介してくれた先輩にその話を聞かされたらしい。
夜中にホテルで一人、しかも自殺があったホテル。フロントからは女性が落ちた場所が
見える。彼にしてみれば、決して心地の良い職場環境とは言えない。
特に古い訳でもないし、綺麗な新めのホテルなので、私には全く気持ち悪さも感じない。
その話を聞くまでは。

つづく

184 名前:183 投稿日:02/08/20 13:24
それは、ある土砂降りの雨が降る夜の事。先輩が一人で夜勤。
作り話のようであるが、ずぶ濡れの細身の女性が一人訪ねて来た。
濡れた体を拭こうともせず、うな垂れて言う。
「部屋は空いてますか?」・・・
「はい、空いています」
「窓の有る部屋にして下さい」・・・
声はか細く、ずぶ濡れ、よく見ると手首に無数のためらい傷、窓の有る部屋を要求。
普通ではないと感じた先輩は、部屋へその女性客を通した後、念の為に責任者へ連絡。
と、あまり時間が経たない内に、外から「落ちたぞー!」という大声が聞こえた。
女性は窓から身を投げたのだが、一度電線に引っかかった後地面へ落ちたらしい。
すぐさま救急車で運ばれたが、残念ながら病院で息を引き取ったとのこと。

つづく

185 名前:183 投稿日:02/08/20 13:25
そこのホテルには、ある常連客がいる。釣り好きの明るい気さくなオヤジらしい。
彼が夜勤に入っている日、その常連客が酔っ払って帰って来た。すこぶる陽気なその客は
彼に一言二言話しかけ、部屋へ。
しばらくして、その常連客から電話があった。
なんでも、通路の一番奥の部屋の前で、赤いワンピースを着た女性が突然消えたということらしい。
彼は、「この酔っ払いが」と思いながら適当に応対し、電話を切る。
またしばらくして、例の常連客からフロントへ電話が。
「早く女を部屋に通せ!」と怒った口調で何か訳の分からぬ事を言っている。
彼にはサッパリ意味が分からず「何の事でしょうか?」とたずねた。
「とぼけるな!今さっき女性から部屋に電話があったぞ!」
どうやら、外部からその常連客の部屋に電話をしてきたた女性が居て、今フロントに居るから
直ぐに部屋に行くわと言ったそうだ。
が、外部から直通で部屋に電話する事が出来ない仕組みらしい。一度フロントを
通さない限り無理なのだ。もちろん彼は外部からの電話を受け取っていないし、
常連客の部屋へ繋いでもいない。おまけにフロントには誰も居ない。

この話をしている時の彼の顔は、引き攣った青ざめた顔で、その時の恐怖感を表していた。
つづく

186 名前:183 投稿日:02/08/20 13:25
次の日、何事も無かったかのように、その常連客はいつもの如く早朝釣りへと出かけた。
普通は昼過ぎか夕方に帰ってくるそうだが、その日は行って2時間も経たない内に戻って来た。
会社の上司の身内の女性で不幸があったから、通やへ行かなければならなくなったそうだ。
会計を済ませた常連客が言った。
「昨晩見た消えた女性といい、電話をかけてきた謎の女性といい、一体何だったのだろうか?
亡くなった女性の何かを暗示していたのだろうか?」
常連客は、そのホテルで飛び降り自殺があった事実を知らない。
謎の二人の女性と、亡くなった常連客の上司の身内の女性との関係も分からない。
彼はその後しばらく、その不気味なホテルでアルバイトをした。あの体験を忘れられないまま。

おわり 長文スマソあ